HOME

チャペルブラムプトン*　Chapel Brampton　牡　1912　栗毛　GB

《血統表》

ﾍﾞｯﾎﾟｰ Beppo 鹿　1903　GB	ﾏﾙｺ Marco 栗　1892　GB	ﾊﾞｰｶﾙﾀﾞｲﾝ Barcaldine	Solon
			Ballyroe
		ﾉｳﾞｨｼｴｲﾄ Novitiate	Hermit
			Retty
	ﾋﾟｯﾃｨ Pitti 黒鹿　1898　GB	ｾｲﾝﾄﾌﾗｽｷﾝ St.Frusquin	St.Simon
			Isabel
		ﾌﾛｰﾚﾝｽ Florence	Wisdom
			Enigma
ﾒｽｸﾜｲﾄ Mesquite 　1904　GB	ｾｲﾝﾌｫｲﾝ Sainfoin 栗　1887　GB	ｽﾌﾟﾘﾝｸﾞﾌｨｰﾙﾄﾞ Springfield	St.Albans
			Viridis
		ｻﾝﾀﾞ Sanda	Wenlock
			Sandal
	ｾｲﾝﾄｼﾚｲｳﾞ St.Silave 　1897　GB	ｾｲﾝﾄｻｰﾌ St.Serf	St.Simon
			Feronia
		ｺﾞｰﾙﾃﾞﾝｱｲﾘｽ Golden Iris	Bend Or
			Gardenia

F.No［3-ｎ］

《競走成績》

《代表産駒》

産駒	血統名（繁殖名／種牡馬名）	生年	性	主な勝鞍
トニー	第七チャペルブラムプトン	1921	牡	帝室御賞典、�A連合二哩
チャペル	第六チャペルブラムプトン	1921	牡	帝室御賞典、連合二哩
アストラル		1921	牝	帝室御賞典、各内外国産古馬競走、�A帝室御賞典2回
ワカクサ	若草		牡	帝室御賞典、各内国産古馬連合競走
アスコット			牡	帝室御賞典、農林省賞典、目黒記念、横浜特別、中山4000米
-準備中			-	-

《繁殖成績》

大正8年（1919）輸入

大正9年（1920）供用開始（下総御料牧場）

昭和9年（1934）供用停止

《解説》

雄大な馬格を誇るソロン Solonは英国史上初の三冠馬ウエストオーストラリアン　West Australianの仔だが、ほとんどアイルランドで走って競走成績は偉大な父の脚元にも及ばずなかった。大して期待もされずに片田舎のアイルランドで種牡馬になると、自身と同じ体が大きく気性の悪い産駒を出し、その中からクラシック登録の無いバーカルダイン　Barcaldineが中級レースで12戦無敗の活躍を果たし、牝馬のシルフ　Sylphはアイルランドダービーを制した。こうしてアイルランドのチャンピオンサイヤーにまで上り詰めたのだが、ソロンはルーマニアへと輸出された。アイルランドに残した産駒からは不出走のアービトレイター　Arbitratorがアイルランドダービー馬を出して種牡馬として成功した。

　　　

気性の難しいところも16.1ハンド（約163.5cm）の大きな体も父に似たバーカルダイン　Barcaldineであったが、種牡馬としては父を遥かに超える成績を収め、二冠馬サーヴィスト　Sir Vistoと二冠牝馬ミミ　Mimiを出した。こうした産駒の中の1頭であるマルコ　Marcoはクラシック不出走で、種牡馬としても特別優れた成績を収めたわけではなかったが、マルコの孫の代に体高17ハンド（約172.7cm）を誇る8戦全勝の偉大なハリーオンが出た頃には、ソロンの他の系統はほとんど滅んでいたため、結局のところマルコはゴドルフィンアラビアン系を滅亡から救済した開祖ということになった。

同じ頃、遥か極東でハリーオンに勝るとも劣らないほどの大成功を収めてマルコの父系を広めたのが本馬チャペルブラムプトン*である。父のベッポウBeppoはハードウィックS、ジョッキークラブS、マンチェスターCとユニオンジャックSに勝ち、セントレジャーで差のない3着に入った中級ステイヤーである。他のクラシック競走では2000ギニーで4着、ダービーは6着だった。共和国大統領賞に遠征して故障して引退した。Beppoはオークス馬My Dearを出したが、最良の産駒のPicaroonはチャンピオンSやミドルパークSに勝ったが病で死んでしまい、後継を残さなかった。その結果Beppoの最大の功績は、三冠馬ゲイクルセイダーGay Crusaderの母の父となったことであるが、本邦においては名種牡馬チャペルブラムプトン*を送り出して、日本の競走馬のレベルアップに貢献したことにある。とはいえ、血統を見るに、チャペルブラムプトンの優秀さは父譲りというよりはそれ以外の祖先によるところが大なのではないだろうか。St.Simonの4×4にはじまり、母の父セインフォインSainfoinはストックウェルStockwellの近交馬だし、ニューミンスターNewminsterら実に多くの主流血脈を受けている（とはいえ、同時に本邦に輸入されたベンドア直系の半兄ジョンラムトン*　John Lambtonが箸にも棒にもかからぬ成績だったことから、当然本馬の父系の影響力は無視できない）。

大正期、日本の競馬は馬券禁止のあおりを受けて沈み込んだが、大正12年に馬券が復活すると、関東大震災の影響から回復した大正13年には急激に往年の盛況を取り戻した。宮内省が輸入したチャペルブラムプトン*はこの時期に登場し、多くの大レースの勝馬を送り出した。チャペルブラムプトン*はそれまで下総牧場に繋養された種牡馬の中では桁違いの成功を収め、孫の代まで活躍馬が出た。もう少し後にシアンモア*とトウルヌソル*の二大種牡馬時代が到来するが、その前の時代を制していたのが本馬である。

【チャペルブラムプトン*　Chapel Bramptonとマルコ　Marco父系概略図】

Solon

｜Sylph（f　愛ダービー）

｜Philammon

｜｜Pet Fox （愛ダービー）

｜Arbitrator

｜｜Kilwarlin（セントレジャー）

｜｜｜Ogden

｜｜｜｜Sir Martin（サラトガスペシャル）

｜｜｜｜｜星友*（f）

｜｜｜｜The Finn（ベルモントS・ウイザースS。米チャンピオンサイヤー）

｜｜｜｜｜Zev（ケンタッキーダービー、ベルモントS、Papyrusとのマッチレース）

｜｜｜｜Flying Ebony（ケンタッキーダービー）

｜Barcaldine

｜｜Sir Visto（ダービー、セントレジャー）

｜｜Mimi（f　1000ギニー、オークス）

｜｜Morion（アスコット金盃）

｜｜Goodfellow

｜｜｜Chaleureux

｜｜｜｜Signorinetta（f　ダービー、オークス）

｜｜Winkfield

｜｜｜Bachelor’s Button（アスコット金盃）

｜｜｜｜シルバーバットン*（f）

｜｜｜Winkfield’s Pride（ドンカスターC）

｜｜｜｜Finasseur（仏ダービー、パリ大賞）

｜｜Wolf’s Crag

｜｜｜Linacre　⇒濠州大種牡馬

｜｜Marco（ケンブリッジャーS）

｜｜｜マリコ*

｜｜｜Bronzino（ドンカスターC）

｜｜｜Omar Khayyam（ケンタッキーダービー）

｜｜｜Neil Gow（2000ギニー）

｜｜｜｜Re-echo　⇒アルゼンチン父系

｜｜｜Beppo（ハードウィックS）

｜｜｜｜My Dear（f　オークス）

｜｜｜｜Aleppo（アスコット金盃）

｜｜｜｜Gioconda（f　ヨークシャーオークス）

｜｜｜｜Picaroon（チャンピオンS）

｜｜｜｜Torelore（ジョッキークラブS）

｜｜｜｜チャペルブラムプトン*　Chapel Brampton

｜｜｜Marcovil（ケンブリッジャーS）

｜｜｜｜Flippant

｜｜｜｜｜ヤハギガワ*（f）

｜｜｜｜Ballyeaston

｜｜｜｜｜セレタ*（f）

｜｜｜｜Hurry On

トニー　（血統名）第七チャペルブラムプトン　牡　1921　栃栗毛　JPN　千葉県・印旛村　下総御料牧場　大島要三氏所有

チャペルブラムプトン* Chapel Brampton 栗　1912　GB	ﾍﾞｯﾎﾟｰ Beppo 鹿　1903　GB	ﾏﾙｺ Marco	Barcaldine
			Novitiate
		ﾋﾟｯﾃｨ Pitti	St.Frusquin
			Florence
	ﾒｽｸﾜｲ Mesquite 　1904　GB	ｾｲﾝﾌｫｲﾝ Sainfoin	Springfield
			Sanda
		ｾｲﾝﾄｼﾚｲｳﾞ St.Silave	St.Serf
			Golden Iris
アア　第三モント 栗　1909　JPN	ブラマンテー* Bramante 鹿　1898　GB	ﾍﾞｽﾄﾏﾝ Best Man	Melton or Ormonde
			Wedlock
		ﾊﾞﾙﾚｯﾀ Barletta	Barcaldine
			Cipollina
	アア　モント 鹿　1901　JPN	アア　ミグノン* 栗　1893　FRA	Joujou
			ヴェリテー
		アア　第二東山	アラ　ユスーフ*
			東山

F.No.［15-c］

《競走成績》

【戦績】18勝

【主な勝鞍】帝室御賞典、�A連合二哩

【主な戦績】

年	月日	開催	競走名	距離	頭数	着順	勝タイム （着差）	重量	騎手	2着馬（勝馬）
準備中	-	-	-	-	-	-	-	-	-	-
-	-	-	-	-	-	-	-	-	-	-

【獲得賞金】円

《繁殖成績》

昭和4(1929)年より供用（青森県三戸郡田部村）

昭和9(1934)年3月斃死

《解説》

下総御料牧場の起源は文武帝の治世8世紀初頭とされ、後の16世紀後半、関東制覇の北条氏政が上総・下総にまたがる北総台地の広い地域を千葉介邦胤に命じて馬産を行わせたのが直接の始まりである。この地域は千葉野と称されていたが、徳川の時代になると堀田加賀守佐倉の領守となり佐倉野と称されるようになった。佐倉野は佐倉7牧（内野、高野、柳沢、取香、矢作、小間子、油田）と小金5牧に区分されており、このうち取香牧（現在の成田市三里塚）がその後の御料牧場の中核地となる。当時の馬産は自然繁殖による自由交配を行い、これを年中昼夜を問わず放飼し、馬は野草を食べ、成長したところで毎年秋に3歳以上の雄駒を捕獲し、最も優れたものを幕府に納め、2〜300頭を10両から70両程度の高値でセリで売却し、残りはふたたび放牧するというもので、記録によれば総数2000頭を下回る程度の規模の馬を持っており、最盛期の天保期には3,500頭の規模を数えたという。文久3(1863)年にはフランスから贈呈されたサラブレッド牝馬（別の資料に拠ればアラブ）パリス*（別名イロンデール*）、高砂*、老松*などが共に取香牧に入り、このうち芦毛の高砂*は孕仔の吾妻を残した。

しかし、明治維新の動乱を迎えて多くの馬が売却され、佐倉7牧の馬は取香牧に集められたが、明治5(1872)年に疫病が発生して集められた多くの馬が斃死するに及び、僅か200余頭まで減少してしまった。さらに近親交配が行われたために馬格は著しく劣悪となり、惨憺たる様を呈した。こうして明治8(1875)年、参議兼内務卿大久保利通により大改革が行われ、海外から良種の牛馬羊や農機具を導入し、我が国牧畜耕耘の範となるべく大農法経営がはじめられた。広大な敷地は牧羊場と、牛馬の改良を行う取香種畜場とに分割された。1300haを越す敷地を持つ種畜場は、全国で供用される種畜（ここでは牡牝の両方を指す）を生産するのが目的で、馬に関しては乗用、乗車用、貨車用、農用などさまざな用途にあわせて改良され、各府県に貸与された。当初繋養されたのは前述の吾妻など下総の馬のほか、青森から20頭の内国種牝馬が購入された。

明治10(1877)年4月に種畜場ははじめて米国より16頭の馬を輸入した。この中に、牡4頭、牝3頭のサラブレッドも含まれていた。牡馬ロストン*、ブラドレー*、モンマース*、トムビース*、牝馬はクララマクゲレー*、クレー*、ゼシーフォールド*である。（このほか英国から寄贈された種馬など数頭のサラブレッドも入場している）。このうちゼシーフォールド*はブラドレー*を交配されて本邦初の内国産サラブレッド、第二ゼシーフォールドを産んだ（詳細別項）。この種馬の輸入は、毎年3〜5頭規模で数年続いた。その後明治13年に種畜場と牧羊場が合併して下総種畜場と改称し、明治18年には宮内省の管轄となる。この頃のサラブレッド繋養数は30頭。翌年明治19年に、旧来の放飼野産馬は改良に適さないとしてすべて払い下げ、このときから完全な血統改良種畜場となった。さらに明治21年に宮内省主馬寮所管下総御料牧場となり、皇室向けの乗馬や儀式用馬の生産を担うこととなり、牧場長に新山荘輔が就任した。

第七チャペルブラムプトンは、下総御料牧場の新鋭種牡馬チャペルブラムプトン*のファーストクロップである。母第三モントは上述のゼシーフォールド*に下総御料牧場の種牡馬を5代に渡って交配された由緒正しい牝系の出自で、既に大正10年の帝室御賞典拝領馬ハツタマを産んでいた。

トニーは阪神でデヴューし、初日の新呼馬戦を不良馬場にもかかわらず1哩1分(1 1/8哩)で1.56.11のレコードを出して周囲を驚かせると、4日目には優勝戦も制した。さらに根岸の帝室御賞典を勝って名声を高め、福島で御賞典を拝領した僚馬チャペルと共に秋の阪神に遠征を行った。チャペルは連合二哩に勝ち、4日目の優勝戦に回ったトニーは楽勝してTC時代をつくった。

チャペル　（血統名）第六チャペルブラムプトン　牡　1921　栗毛　JPN　千葉県・印旛村　下総御料牧場　大島要三氏所有

チャペルブラムプトン* Chapel Brampton 栗　1912　GB	ﾍﾞｯﾎﾟｰ Beppo 鹿　1903　GB	ﾏﾙｺ Marco	Barcaldine
			Novitiate
		ﾋﾟｯﾃｨ Pitti	St.Frusquin
			Florence
	ﾒｽｸﾜｲ Mesquite 　1904　GB	ｾｲﾝﾌｫｲﾝ Sainfoin	Springfield
			Sanda
		ｾｲﾝﾄｼﾚｲｳﾞ St.Silave	St.Serf
			Golden Iris
アア　第四パレード 栗　1910　JPN	ブラマンテー* Bramante 鹿　1898　GB	ﾍﾞｽﾄﾏﾝ Best Man	Melton or Ormonde
			Wedlock
		ﾊﾞﾙﾚｯﾀ Barletta	Barcaldine
			Cipollina
	アア　パレード 鹿　1899　JPN	アア　ミグノン* 栗　1893　FRA	Joujou
			ヴェリテー
		アア　第四吾妻	ローストン*
			アラ　吾妻

F.No.［ntb］

《競走成績》

【戦績】11勝

【主な勝鞍】帝室御賞典、連合二哩

【主な戦績】

年	月日	開催	競走名	距離	頭数	着順	勝タイム （着差）	重量	騎手	2着馬（勝馬）
準備中	-	-	-	-	-	-	-	-	-	-
-	-	-	-	-	-	-	-	-	-	-

【獲得賞金】円

《繁殖成績》

昭和5(1930)年より供用（宮崎県東臼杵郡）

昭和10(1935)年1月斃死

《解説》

在日外国人よって明治21年にはじめられた馬券の発売は根岸の日本レース倶楽部に活況を与えたが、治外法権下の横浜であったため、賭博を禁じた法律にも拘らず政府はこれを放置した。明治28年の日清戦争、明治32年の北清事変、明治37年の日露戦争と、大陸での戦乱の中で日本軍の軍馬は能力が著しく劣り、そのため多数の戦死者が出るに及んで、明治天皇は時の元老伊藤博文に馬匹改良を命じることとなる。これを受けて第一次桂太郎内閣は産馬育成のための競馬開催の検討に入り、明治39年秋にようやく池上競馬場にて東京競馬会による馬券発売の競馬が開催される運びとなる。横浜の日本レース倶楽部を手本として挙行されたこの池上競馬には、審判にS・アイザック氏、速力検定に松平容大子爵、会計と馬場取締に帝国陸軍騎兵中尉安田伊左衛門など、当時考えうる超一流のスタッフを集め、特に馬券の発売や払戻し、発馬、審判などの重要な業務には横浜から熟練の外国人スタッフを招聘して万難を廃止して開催され、4日間で予想をはるかに上回る96万円の売上を記録して大成功裡におわった。

相当の準備期間とスタッフを集めて行われた東京競馬であったが、この成功に続けと、各地で急速に競馬熱がおこる。安田をはじめ東京競馬会の役員は準備不足による混乱を危惧し、競馬会の認可は慎重に行うように進言したが、政府は社団法人の認可を乱発し、翌明治40年と明治41年に政府の認可を受けて札幌、函館、川崎、板橋、目黒、松戸、藤枝、新潟、京都、鳴尾、小倉、宮崎の各地に相次いで競馬倶楽部が誕生した（※）。しかし、爆発的に増えた競馬倶楽部各地では、競馬運営を熟知した者が不足し、一部では営利主義に走るものも出て、馬券の配当金の計算がおかしいとか、八百長といった騒動が連日頻発し、紳士淑女を集めた競馬はあっという間にやくざ者が出入りする柄の悪い場所へと成り下がった。日露戦争での苦戦の記憶も薄れ、馬匹改良の世論にかわって競馬排斥論が世論の中心となった。（※栃木県小山にも公認が与えられたが、直後に馬券が禁止されて開催実現はしなかった。）

もともと馬券の発売は政府による明治38年の黙許に拠っており、各競馬倶楽部には政府の馬政官が派遣され監督をしていたが、明治41年9月、馬券禁止の強硬派であった岡部司法大臣は神戸地裁検事に命じて鳴尾競馬馬券販売主任者を賭博容疑で検挙した。馬政局には無断であった。世論はこれを支持し、新聞は競馬撲滅論を書きたてた。驚いた競馬関係者は桂首相に直々にあたって政府の方針を問いただし、競馬開催と馬券発売の黙許継続の確認を得た。10月1日から新刑法が施行されたが、翌2日から松戸競馬は通常に開催され、関係者は胸を撫で下ろしたが、最終日の5日になって、突如馬券発行禁止の閣令が発せられた。東京競馬認可より僅か2年の出来事であった。桂内閣に裏切られた競馬界は、後の大正2年に東京競馬倶楽部会長の尾崎行雄が司法大臣となり、第三次桂内閣の不正工作を弾劾して総辞職に追込み、復讐を果たした。

桂内閣を打倒したとはいえ馬券が復活したわけではなく、各地の競馬倶楽部の経営は不振を極めた。大正6年、静岡の藤枝競馬倶楽部は経営難のため会長の岡崎平四郎氏から1万6500円で福島民友新聞創始者大島要三議員ら7人からなる団体に買収された。大島氏は東北本線の開通に尽力し、福島市内の電気、ガスや路面電車の整備をした福島の名士である。もともと福島では、明治20年から福島県産馬会社によって奉納競馬が信夫山公園に設けられた競馬場で毎年春秋季に開催されていたが、明治30年代に廃れていたのを郡山の開成山に移され、日露戦争後の競馬熱にのって地方競馬としては全国屈指の盛り上がりを見せていた。

郡山では県議や本宮町長を歴任した政友会の伊藤弥氏（昭和初期の人気歌手伊藤久男の父）や日本三大金山のひとつにかぞえられる高玉金山経営者の肥田金一郎氏、伊達の服部宗右衛門氏らが福島愛馬会を組織し、憲政会議員大島氏と党派の違いを超えて手を結び、精力的な競馬誘致を行った。年間１万頭規模の生産を行っていた有数の馬産地である福島であったが、公認競馬の認可を受けられぬまま明治41年の馬券禁止時代を迎えており、公認競馬の藤枝競馬倶楽部を移転させる形式で念願の東北地方初の公認競馬場が設立されることとなった。陸軍による移転の許可がされると、大島氏らは自ら保証人となって銀行から10万円を借り入れて競馬運営の資金とし、福島市長二宮哲三氏に一切の経営を委任した。競馬場の建設資金は市民から出資された。こうして翌大正7年より、大島氏を福島競馬倶楽部の会頭に迎えて福島競馬が開催されることとなった。会頭はその後、大島氏と肥田氏が交互に歴任した。福島競馬開催のもう一人の立役者である伊藤氏は、無念にも念願の開催を前に没した。藤枝から移った最初の一年で売上は3.5倍になり、翌大正8年にはさらに4倍となって福島移転は大成功となった。京浜地区からの遠征客も多く、競馬開催前日に上野を出る急行には乗客があふれ、増結車が用意されるほどであった。大正11年には帝室から御賞典が下賜され、帝室御賞典競走が行われて大島要三はダークメードでこれを勝ち、御賞盃受領の名誉に浴した。

チャペルはトニーと同じく下総御料牧場の名門吾妻の子孫で、ミグノン*、ブラマンテー*チャペルブラムプトン*と代々配合された種牡馬も同じである。チャペルは大島要三氏の持馬として大正14年の春に東京の1哩1分の新呼馬戦でデヴューすると、初日に5ポンド軽量のローランドに3/4馬身差で惜敗したが、翌日には大差で勝ちあがった。翌週の新馬戦を勝つカノウよりも8秒以上速いタイムであった。チャペルは最終日の優勝戦をローランドに5馬身差をつけて雪辱を果たすと、福島に戻って帝室御賞典を勝った。秋になると、横浜で御賞典を勝ったトニーと共に阪神遠征を行い、連合二哩を制した。

アストラル　牝　1921　栗毛　JPN　千葉県・印旛村　下総御料牧場　高井治兵衛氏所有

チャペルブラムプトン* Chapel Brampton 栗　1912　GB	ﾍﾞｯﾎﾟｰ Beppo 鹿　1903　GB	ﾏﾙｺ Marco	Barcaldine
			Novitiate
		ﾋﾟｯﾃｨ Pitti	St.Frusquin
			Florence
	ﾒｽｸﾜｲ Mesquite 　1904　GB	ｾｲﾝﾌｫｲﾝ Sainfoin	Springfield
			Sanda
		ｾｲﾝﾄｼﾚｲｳﾞ St.Silave	St.Serf
			Golden Iris
種義 栗　1912　JPN	ダイヤモンドウェッディング* Diamond Wedding 鹿　1905　GB	ﾀﾞｲﾔﾓﾝﾄﾞｼﾞｭﾋﾞﾘｰ Diamond Jubilee	St.Simon
			Perdita
		ｳｪﾄﾞﾛｯｸ Wedlock	Wenlock
			Cybele
	ビューチフルドリーマー* Beautiful Dreamer 栗　1903　GB	ｴﾝｼｭｰｼﾞｱｽﾄ Enthusiast	Sterling
			Cherry Duchess
		ﾚﾎﾟｿ Reposo	Amphion
			Monotomy

F.No.［12］

《競走成績》

【戦績】16勝

【主な勝鞍】帝室御賞典、各内国産古馬競走、�A帝室御賞典2回

【主な戦績】

年	月日	開催	競走名	距離	頭数	着順	勝タイム （着差）	重量	騎手	2着馬（勝馬）
大正14	秋	阪神	各内国産呼馬	1 1/8M	-	1	2.00.13	-	尾形	-
-	11/22	東京	内国産各抽籤内外国産呼馬	1 1/8M	9	2	1馬身	126	尾形	タマカゼ
-	11/23	東京	帝室御賞典	1 1/8M	9	2	5馬身	126	尾形	カーネーション
-	11/28	東京	優勝内国産馬連合競走	2M	9	2	1/2馬身	125	尾形	カノウ
-	11/29	東京	内国産各抽籤内外国産呼馬未勝利	1 1/8M	8	1	2.03.59	125	尾形	ハンナー
大正15	11/7	横浜	帝室御賞典	1 1/8M	8	2	-	-	伊藤勝	アスベル
昭和2	5/1	東京	帝室御賞典	1 1/8M	9	1	1.55.05	125	岩佐	キントキ
	11/20	東京	各内外国産古馬競走	2 1/8M	5	1	R3.47.58	127	尾形	クモカゼ

【獲得賞金】33,046円

《代表産駒》

産駒		主な勝鞍
カブトヤマ	牡	日本ダービー、帝室御賞典、連合二哩、目黒記念、ほか
ガヴァナー	牡	日本ダービー
ロッキーモアー	牡	天皇賞、横浜農林賞典四・五歳呼馬競走
ファインモア	牡	中山記念
ミスアストラル	牝	�A帝室御賞典
シャイニングサン	牡	�B帝室御賞典

《繁殖成績》

岩手県雫石村・小岩井農場で繋養

昭和18年5月5日斃死

《解説》

大正13(1924)年、下総御料牧場の競市で、後にアストラルと名づけられる牝馬が1,350円の安値で売られた。母系はビューチフルドリーマーに遡るまずまずの良血だったが、父チャペルブラムプトン*はまだ実績の無い新種牡馬で、この牝馬自身も線が細くて見栄えの悪い馬であった。しかし、この馬に目をつけた尾形藤吉は懇意にしていた大馬主の多賀一に言って、その日のうちにこの馬を1,500円で買わせた。もしこの馬が勝ったら、追加で300円を支払うという約束であった。この約束は後に果たされた。

さて、その一年前の大正12年春、ビューチフルドリーマ−*の牡駒スターリングは名馬ラシカッターを破って連合二哩を勝ち、ビューチフルドリーマー*産駒としてはインタグリオ以来2頭目の大レース勝馬となった。スターリングは血統馬体ともに一流の名馬であった。しかし好事魔多し、大正13年、スターリングはレース中に内ラチに激突し、脳肺充血で哀れな最期を遂げた。愛馬を失って落胆する馬主の高井治兵衛氏に、多賀一は自らの持馬から最良の馬2頭を格安の価格で譲り渡した。このうちの1頭がアストラルである。

アストラルは身体が小さい上に食も細く、アメリカ燕麦を与えられて根気よく育成され、5歳の秋になってようやく競走に耐えうるまでになった。こうして大正14(1925)年秋、阪神で勝ち上がったアストラルは目黒に遠征して帝室御賞典と連合二哩に挑戦、それぞれ二着となった。翌年横浜の帝室御賞典も二着に甘んじたが、新潟、福島と転戦して勝ちまくり、昭和2年、7歳の春に目黒の帝室御賞典を優勝すると、秋には混合競走の各内外国産古馬競走（現在の目黒記念）をレコード勝ちして引退した。

重馬場が得意だった。

引退したアストラルは、小岩井農場に購入された。小岩井農場は、かつて英国より輸入した牝馬群と名種牡馬インタグリオーによって名馬を多く輩出した王国であったが、生産馬の多くを外部に売却し続けた結果、成績は低迷していた。そこでビューチフルドリーマー*の孫に当たるアストラルをいわば買い戻して、牧場の再建を図ろうとしていた。ほかにもコイワヰやパシフィックらを繋養し、さらに昭和3年に英国よりシアンモア*を輸入した。アストラルはこのシアンモア*が配合されて、名馬にして名種牡馬の第二回ダービー馬カブトヤマを筆頭に、ダービー馬ガヴァナー、天皇賞馬ロッキーモアーを出し、ファインモアは中山記念を制した。アストラル自身は結局15年間余りの繁殖生活で産駒は8頭にとどまり、特別仔出しがいい部類とはいえないが、そのうち6頭が重賞に勝つか入着し、繁殖牝馬としては最高級の成績を収めた。産駒はカブトヤマが種牡馬として成功して重賞競走にその名を留めるほどの歴史的名馬となり、牝馬の第貳アストラルはまったく産駒を残せないまま農林学校に寄贈されてしまったが、代わりに第参アストラルはオーマツカゼを産んでビューチフルドリーマー*系の繁栄を決定的なものとした。

【アストラルの初期牝系図】

ビューチフルドリーマー*　Beautiful Dreamer

｜種義

｜｜アストラル　帝室御賞典、各内国産古馬連合競走

｜｜｜シャイニングサン（シャイニングスピヤー*　牡1929栗）　�B帝室御賞典

｜｜｜カブトヤマ（シアンモア*　牡1930鹿）日本ダービー、帝室御賞典、各内国産馬古馬競走（連合二哩）、目黒記念、中山秋季５歳馬特別

｜｜｜ガヴァナー（シアンモア*　牡1932黒鹿）日本ダービー

｜｜｜第貳アストラル　(競)ミスアストラル（シアンモア*　牝1933鹿）�A帝室御賞典

｜｜｜ファインモア（シアンモア*　牡1934鹿）中山記念

｜｜｜スモールアゲン（シアンモア*　牡1935鹿）

｜｜｜ロッキーモアー（シアンモア*　牡1936鹿）天皇賞、横浜農林省賞典四・五歳呼馬競走

｜｜｜第参アストラル　(競)アストモア（シアンモア*　牝1937鹿）

｜｜｜｜アケツユ（プリメロ*　牡1942栗）

｜｜｜｜パストラル（セントライト　牡1943鹿）

｜｜｜｜オーマツカゼ（セントライト　牝1944栗）�A桜花賞

｜｜｜｜｜チェリオ（プリメロ*　牝1950鹿）最優秀古牝馬　スプリングＳ、中山記念、ラジオたんぱ賞、クイーンＳ、府中牝馬Ｓ、�Aオークス

｜｜｜｜｜マーヴェラス（プリメロ*　牝1951鹿）�A阪神３歳Ｓ

｜｜｜｜｜ケゴン（プリメロ*　牡1952栗）皐月賞、�A朝日杯３歳Ｓ、�B日本ダービー

｜｜｜｜｜エンジェル（クモハタ　牝1954栗）

｜｜｜｜｜ライジングサン（ライジングフレーム*　牡1956青）

｜｜｜｜｜マツカゼオー（トサミドリ　牡1957栗）最優秀３歳牡馬　朝日杯３歳Ｓ、�A皐月賞、菊花賞

｜｜｜｜｜オーハヤブサ（ヒンドスタン*　牝1959黒鹿）オークス

｜｜｜｜｜ミスニュージャパン（ヒンドスタン*　牝1960黒鹿）

｜｜｜｜｜ビューティーロック（チャイナロック*　牝1962栗）�A朝日杯３歳Ｓ

｜｜｜｜｜メジロナデシコ（チャイナロック*　牝1964栗）

｜｜｜｜｜トキノマツカゼ（チャイナロック*　牝1966栗）

｜｜｜｜シラタキ（セントライト　牡1945鹿）

｜｜｜｜ツバクロ（セントライト　牝1946鹿）

｜｜｜｜｜ヒシタカ（プリメロ*　牡1952鹿）�AスプリングＳ

｜｜｜｜｜ヒロカツラ（プリメロ*　牝1954鹿）

｜｜｜｜｜ミステラオー（プリメロ*　牝1955鹿）

｜｜｜｜｜ハマユー（ゲイタイム*　牝1956鹿）�Aオークス

｜｜｜｜｜フィリーヨルカ（ゲイタイム*　牝1957鹿）

｜｜｜｜ハイライト（ロックフォード　牡1948栗）

ワカクサ　（種）若草　牡　1927　鹿毛　JPN　北海道・新冠　宮内省新冠御料牧場　

チャペルブラムプトン* Chapel Brampton 栗　1912　GB	ﾍﾞｯﾎﾟｰ Beppo 鹿　1903　GB	ﾏﾙｺ Marco	Barcaldine
			Novitiate
		ﾋﾟｯﾃｨ Pitti	St.Frusquin
			Florence
	ﾒｽｸﾜｲ Mesquite 　1904　GB	ｾｲﾝﾌｫｲﾝ Sainfoin	Springfield
			Sanda
		ｾｲﾝﾄｼﾚｲｳﾞ St.Silave	St.Serf
			Golden Iris
種秀 鹿　1916　JPN	インタグリオー* Intaglio 栗　1899　GB	ﾁﾙﾄﾞｳｨｯｸ Childwick	St.Simon
			Plaisanterie
		ｶﾒｵ Cameo	Thurio
			Light of Other Days
	プロポンチス* Propontis 鹿　1897　GB	ﾚｲｳﾞｪﾝｽﾞﾍﾞﾘｰ Ravensbury	Isonomy
			Penitent
		ﾏｰﾓﾗ Marmora	Adventurer
			Milliner

F.No.［4-d］

《競走成績》

【戦績】14勝

【主な勝鞍】帝室御賞典、各内国産古馬連合競走

【主な戦績】

年	月日	開催	競走名	距離	頭数	着順	勝タイム （着差）	重量	騎手	2着馬（勝馬）
準備中	-	-	-	-	-	-	-	-	-	-
-	-	-	-	-	-	-	-	-	-	-

【獲得賞金】円

《代表産駒》

産駒		主な勝鞍
情報なし	-	-

《繁殖成績》

不明

《解説》

準備中。

《産駒一覧》

産駒	血統名等	性	生年	毛色	母	生産地等	競走成績、勝鞍等	備考
準備中	-	-	-	-	-	-	-	-
-	-	-	-	-	-	-	-	-

アスコット　牡　1928　栗毛　JPN　千葉県　下総御料牧場　

チャペルブラムプトン* Chapel Brampton 栗　1912　GB	ﾍﾞｯﾎﾟｰ Beppo 鹿　1903　GB	ﾏﾙｺ Marco	Barcaldine
			Novitiate
		ﾋﾟｯﾃｨ Pitti	St.Frusquin
			Florence
	ﾒｽｸﾜｲ Mesquite 　1904　GB	ｾｲﾝﾌｫｲﾝ Sainfoin	Springfield
			Sanda
		ｾｲﾝﾄｼﾚｲｳﾞ St.Silave	St.Serf
			Golden Iris
種秀 鹿　1916　JPN	インタグリオー* Intaglio 栗　1899　GB	ﾁﾙﾄﾞｳｨｯｸ Childwick	St.Simon
			Plaisanterie
		ｶﾒｵ Cameo	Thurio
			Light of Other Days
	プロポンチス* Propontis 鹿　1897　GB	ﾚｲｳﾞｪﾝｽﾞﾍﾞﾘｰ Ravensbury	Isonomy
			Penitent
		ﾏｰﾓﾗ Marmora	Adventurer
			Milliner

F.No.［4-d］

《競走成績》

【戦績】17勝

【主な勝鞍】帝室御賞典、農林省賞典競走（阪神）、目黒記念、中山4000米、横浜特別、�A帝室御賞典2回

【主な戦績】

年	月日	開催	競走名	距離	頭数	着順	勝タイム （着差）	重量	騎手	2着馬（勝馬）
準備中	-	-	-	-	-	-	-	-	-	-
-	-	-	-	-	-	-	-	-	-	-

【獲得賞金】円

《代表産駒》

産駒		主な勝鞍
情報なし	-	-

《繁殖成績》

不明

《解説》

準備中。

《産駒一覧》

産駒	血統名等	性	生年	毛色	母	生産地等	競走成績、勝鞍等	備考
準備中	-	-	-	-	-	-	-	-
-	-	-	-	-	-	-	-	-

Chapel_Brampton.html　2004　（財）零細系統保護協会